包み込む集いの住処
西鉄下大利駅にほど近く、豊かな自然も各所に残る大野城市の住宅街。ここに、ご高齢のお母様とその暮らしを支えるご姉妹が集い、支え合い、笑顔あふれる毎日を送るための建築プロジェクトがスタート。
大勢のご親族が一堂に会したり、ご友人や知人が集まったりと、“集いの象徴”にもなるべく使命を持って生まれるこの場所は、住まい手それぞれのプライバシーを守りつつ、賑やかな集いを活性する“家族のシェアハウス”ともいえる新たな住まい方ができるものとして計画。
そんな暮らしを末永く、そして次の世代にも住み継いで守り続けることができるよう願いを込め、「包み込む」意匠で体現した集いの住処だ。
大地から隆起した黒い岩
大地から黒い岩石が隆起するイメージのもと、黒の均一性と直線美でファサードを表現。グリ石で敷き詰めた外構は、その着想の背景を演出したもの。
駐車スペースでの動線は、東西の道路に挟まれる形で接道する敷地形状を活かし、どちら側からの出入りもスムーズになるよう構築。その出入り口間を結ぶ直線ルートを包み込むよう築いたトンネル状のエントランスは、ホテルのロータリーのように車での乗り降りや荷物の出し入れを、雨の日も濡れずに行うことができるものに。
木質のやさしさに
包み込まれる暮らし
住まい手と訪れるお客さまも共有する屋内の空間は、外観の堅牢な佇まいから一変させ、シナ材の木質でやさしく包み込まれるような心地になるよう設計。
各人の部屋を集約した2Fでは、個別に洗面、シャワールーム、トイレを備え、それぞれが独自の暮らしを確立できるよう計画。そして、いつでも集えるようリビングと直結。リビングでは、やわらかな木地で筒状に包まれることにより、空に抜ける開放的な景色へと自然に目線がいき、ご家族全員が日常の和みを満喫できるものに。
外からの視線は窓位置の高さで遮りつつ、気密性・断熱性を高めることで外気の影響はもちろん、目の前を通る電車の音も遮るという“隔てる性能”も兼ね備えることで、より一層の包み込まれる居心地をめざしている。
明るい光が降り注ぐ
開放的な集いの間
南側の大きな窓から常に明るい光を取り入れ、透過性のあるブラインドにより光量も調整できる1Fのダイニングキッチン。景色を大きく切りとり、庭先にもつながる開放性が暮らしに広がりを生むよう計画。
旧家屋から持ち込んだ愛着と歴史のある2つのテーブルは、高さや質感が同一になるようリメイク。日常ではコンパクトな使い方ができ、大人数が集まる際にはつなげて食堂のような大型ダイニングとして活かされる、可変性も備えた空間として形づくっている。